2014年6月11日水曜日

ハンドランチグライダーの空力性能(日本航空宇宙学会論文集 57(663) 166 2009年)

論文読みました。
石井さんが開発した翼型を風洞実験して、過去に低レイノルズ数での実験テータと比較していています。

比較した翼型を、栗田さんの開発した「カモメ型グライダー1号機」と同じ翼コード(140mm)にした場合のサイズを計算してみます
ゲッチンゲン風洞で実験されている翼型
 Go.417a
  翼厚:4mm キャンバー:8mm
 Go.801
  翼厚:14mm キャンバー:9mm
今回実験した翼型
 キャンバ翼
  翼厚:10mm キャンバー:3mm
 フラット翼
  翼厚:9mm キャンバー:3mm

論文ではキャンバ翼と読んでますが、この翼型はやまめ工房の石井さんが開発した翼型で、石井翼型とか、やまめ工房の頭文字を取ってYA翼型とか呼ばれています。以下YA翼と記します。

フラット翼は、YA翼と比較する為、YA翼と同じ翼厚で同じキャンバの翼を実験したようです。

ハンドランチの飛行はランチ時には高速(30m/sレイノルズ数Re=100,000を超える)でノーズを上に向けて、ほぼゼロ揚力(Cl=0)で上昇して行きます。上昇終了時(頂点に達すると)には絶妙なセッティングで何も操縦してないのに滑空に入ります。(これを、「かえり」と読んでます。「このセッティングだと高度は取れるのだけれどもかえりが悪いのだよね」なんて言う会話は良く聞きます)
滑空速度は4m/s(Re=20,000)ぐらいになります。
翼厚14mmのGo.801はReが大きい時は空力性能がいいのですが、Re=70,000を下回るころからガクンと性能が落ち、滑空速度では好ましい性能を発揮できません。
翼厚4mmの板翼であるGo.417aは空力性能低下はなく十分な滑空性能が得られます。
しかし、翼厚4mmで十分な強度を得るのは至難の業でしょう。
翼厚がGo.801の約2/3のYA翼、フラット翼はキャンバーが小さいのも手伝って低レイノルズ数での翼性能低下はありません。
この翼厚(9〜10mm)でどこまでキャンバーを大きくしても低レイノルズでの性能低下が無いかは実験してみなければ分りません。
次にランチ時の性能ですが、最小抵抗(Cdmin)が小さいほど取得高度は大きくなります。
Re=100,000でのCdminを比較すると
Go.417a:0.04
Go.801:0.023
YA翼:0.018
フラット翼:0.02
Go.417aはお話になりません。その他の翼をYA翼と比べるとフラット翼は11%、Go.801は28% 抵抗が増加します。取得高度の差は無視できない大きさになることが想像出来ます。

このレポートではヒステリシスにも触れています。ここで触れているヒステリシスについて簡単に説明すると、例えば
翼が迎角を増して行って10°で失速したとします。その後、迎角がわずかに増した後、徐々に迎角が回復(減って行く)してまた10°になった時、ヒステリシスがある翼だと揚力が回復せず、もう少し迎角が小さくなった時に揚力が回復し、また滑空に戻ります。
つまり、ヒステリシスが大きいと飛行が回復するのに時間が掛かってしまい、高度ロスすることになります。
これは、ランチのかえり調整にも影響するし、風の乱れで失速近い状態になった時、高度ロスにつがります。これは、リッジソアリング時には、高度維持できるか、そのまま高度ロスしてソアリングが出来なくなりあえなく着陸するかの違いになってしまいます。
ヒステリシスが無い翼はGo.417aとYA翼です。
YA翼が断然魅力的に見えてきました。







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