2004年6月15日火曜日

スローフライトでのエルロンの効き

「スローフライトしていてエルロンが効かない」または「効きが悪い」と言う話は良く効きます。
まず、エルロンによるロールの仕組みを説明し、スローフライト時のエルロンに効き及び、その対策を説明していきます。

エルロンによるロールの仕組み
エルロンは主翼に付いている動翼を左右逆に動かして、左右の揚力差を生じさせ、ロール運動をさせるものです。
例えばエルロンを左に切ると、左翼は上げ舵、右翼は下げ舵になります。
20040614Fig1_2.jpg
Fig1,2を見てわかるように、迎角が左翼は減って右翼は増えています。
このことで、揚力が左翼は減って右翼は増えます。
結果、左にロールするのです。
ここで、主翼迎角と揚力(CL)と抗力(CD)を簡単に説明します。
揚力とCL(揚力係数)は正確には違うことを表していますが、どちらも揚力の変化に注目した場合同じなので、今回は、この部分の説明は省略し、CLが大きくなったら大きな揚力でゆっくり飛行すると考えてください。
抗力とCD(抵抗係数)も正確には違うことを表していますが、CDが大きくなれば抗力が大きくなると考えてください。
次にCL、CDと迎角(α)の関係を説明します。
20040614Fig3_4.jpg
CL、CDと迎角(α)の関係をFig.3、4に示します。
ある迎角までは迎角にほぼ比例してCLが大きくなっていきます。それは、翼面にそって空気がなめらかに流れているからです。しかし、ある迎角(この迎角は翼断面型によって違いますが、今回はこの角度α1としました。)を超えたあたりから翼面にそって流れる空気が乱れ始める為、CLの増加は鈍化しやがて最大CLになった後、CLは小さくなっていきます。
CDは最小CDの後、緩やかに増加します。α1を超えたあたりから増加が急激になり、最大CLの迎角を超えると激しく増加します。
スローフライトでのエルロンの効き
スローフライト時とは、失速しない範囲でエレベーターをアップにしていき、飛行速度を落として飛行している状態です。
インドアRCの場合は、飛行速度を落とした飛行をしたいので、飛行機のセッティングをこの状態にしていることがあります。
この状態とは主翼が最大CL近くで飛行している状態になります。Fig.3を見ても分るように、最大CL付近で迎角が大きくなっても小さくなってもCLはあまり変化しません。
つまり、エルロンを操舵しても左右の揚力差は生じません。それどころか、Fig.4のCDの変化を見てわかるように、最大CLの迎角近くで、迎角が大きくなるとCDは大きく増加し、迎角が小さくなると大きく減少します。
つまり、Fig.1,2の例で言えば、左にエルロンを操舵すると、左右の揚力差はほとんど無くて、ロールは発生しません。しかし、左翼の抗力が小さくなり右翼の抗力が大きくなるので、右にヨーイングします。(この事をアドバースヨーイングと言う)
ここで、上反角を持った飛行機の場合、
上反角効果で右にロールします。
つまり、左に旋回したくて、エルロンを操舵したのに、右に旋回を始めたわけです。
従って、スローフライト時は、エルロンの効きが悪くなるだけでなく、逆効きするケースすらあるわけです。
スローフライト時のエルロンの効きを良くする対策
��.上反角を減らす(無くす)
��.差動エルロンにする
��.主翼のキャンバーを反転キャンバーにする。
��.上反角を減らす(無くす)
先に説明したように、アドバースヨーイングが発生した時に、上反角が無ければ、上反角効果によるロールは発生しないので、エルロンの逆効きはなくなります。
上反角が無ければ、100%逆効きはなくなりますが、上反角効果による安定もなくなるので、初心者には操縦が難しくなります。その他の対策(2,3)の効果が大きかったら、多少上反角を付けて、上反角効果による安定を付けたほうが操縦しやすくなると思います。
��.差動エルロンにする
最大CL近くの迎角では、迎角を大きくしてもCLは大きくなりません。それどころかCDが急激に増加してしまいます。
ですら、エルロンの動翼を下げる方は少しさげて、上げる方をたくさん上げれば、左右の揚力差も得られるし、逆効きの原因になる抗力増加も抑えられます。
差動エルロンはリンケージで簡単につけることができます。
エルロンホーンが上に出ている例で説明します。
写真の飛行機は栗田さんが改造したQuickJuniorです。

差動をつけていないケース
20040614Fig5.jpg
差動をつけたケース
アクチュエータのホーンをチャンネル型にして角度をつける。
20040614Fig6.jpg
��.主翼のキャンバーを反転キャンバーにする。
エルロンの動翼を下げにした時に、揚力が増えなかったり、抗力が大きくなったりするので、動翼を下げにした時にできる翼断面型が空力的に良くなる翼断面型をチョイスするのが良いことになる。
20040614Fig7.jpg

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